Column / 馬場物理学 Vol.A 2026.07.04

執筆・監修:梅 陵真(ANCY'S BRIEFING)

更新: · 出典・集計条件の明記と説明の訂正

馬場状態と展開予測
クッション値・含水率・馬場差の読み方

同じ「良馬場」でも、時計の出やすさや伸びる進路は違います。クッション値・含水率・馬場差の意味を確認し、想定する隊列と合わせて展開を考えます。2026年の宝塚記念と安田記念について、公式の結果と当サイトの評価を分けて振り返ります。

01 — Track Measures

クッション値・含水率・馬場差は別の指標

クッション値は芝表面に測定器の重りを落とした際の反応から、馬場のクッション性の目安を示します。芝と路盤の状態が影響し、蹄に掛かる力を直接測ったものではありません。JRA「芝のクッション値に関する基礎知識」

含水率は採取試料の水分の重量割合です。芝では芝を除いた路盤砂、ダートでは表層のクッション砂を測ります。馬場区分は踏査などを含めて総合的に決まり、同じ数値でも場所や状況によって区分が異なります。JRA「含水率に関する基礎知識」

JRAの芝含水率早見表から抜粋した目安。範囲は重なり、自動判定の上限・下限ではありません。
競馬場良の目安稍重の目安重の目安不良の目安
東京19%以下17〜21%18〜23%20%以上
中山13%以下11〜15%14〜18%17%以上
京都13%以下11〜14%13〜16%14%以上
小倉10%以下8〜12%10〜14%12%以上

旧記事で中山と京都をまとめて「不良17%以上」とした点を訂正しました。早見表の数値はコースごとの目安であり、「東京は19%なら必ず良」とは読めません。

馬場差は分析者が基準タイムとの差を補正して作る指標で、単位や計算法は提供元によって異なります。「−10=1秒速い」は一つの表示方法の例です。定義が分からない値を他社・他記事の馬場差と直接比べないでください。

02 — Pace and Position

路面と隊列の見立てを混同しない

時計が出やすい日でも、先行争いが激しくなれば展開は変わります。逆に時計が掛かる日でも、無理なく先行できた馬が残る場合があります。逃げ候補の数、各馬の出足、外を回る距離を確認し、一つの馬場指標だけで脚質を選びません。

Spenceほか(2012)ペース配分とドラフティングは英国の2005〜2007年の追跡データから、隊列と走行速度の関連を分析しています。実際の風向、馬間距離、能力差はレースごとに変わるため、模型実験の抵抗削減率や一定のワット数を個々の馬に直接与えることはできません。

レースラップから血中乳酸、心拍、脾臓の赤血球放出量は測れません。終盤の失速を生理学的な原因として確定する旧説明を改め、確認できる位置取りとラップを中心に検討します。

03 — Takarazuka

宝塚記念:結果と配分例を分けて振り返る

2026年6月14日の宝塚記念は重馬場で行われ、メイショウタバルが2番手から勝ちました。着順と通過順位はJRA「2026年宝塚記念・結果/ラップ/払戻」で確認できます。以下は上位馬と、既存記事に記載した配分例です。

2026年宝塚記念 上位着順
着馬名斤量馬体重タイム上3F人気
1メイショウタバル58.05022:12.135.32
2クロワデュノール58.05142:12.235.21
3ダノンデサイル58.05202:12.635.03

当サイトの既存評価はメイショウタバルF02=96点・F01=90点、クロワデュノールF04=75点でした。これらは独自採点です。メイショウタバルの斤量体重比は58÷502×100で約11.55%ですが、この数値を安全な生理学的範囲と呼ぶ根拠はありません。

クビ差の決着は公式結果として確認できますが、その着差が蓄積疲労のせいだったという測定結果はありません。2番手で運べた点を検討材料とし、削減された空気抵抗の量までは推定しません。

既存記事に記載された配分例(合計1,000円)
区分内容投資額
攻め単勝 16200円
本線3連複 1-5-16300円
保険3連複 1-9-16 等400円
保険ワイド 9-17100円

公式の100円あたり払戻は単勝16が390円、3連複1-5-16が1,230円です。記載の各200円・300円に適用すると780円+3,690円=4,470円で、総額1,000円に対する回収率は447%となります。JRA「2026年宝塚記念・結果/ラップ/払戻」

この計算は記載された配分の照合であり、購入証明や長期的な優位性の検証ではありません。詳細は宝塚記念の分析に続きます。

04 — Yasuda

安田記念:公式ラップと旧説明の違い

2026年6月7日の安田記念はシックスペンスが勝ち、ワールズエンドとガイアフォースが2着同着でした。上位4頭のうち3頭が4コーナー3番手以内、ガイアフォースは9番手です。「上位はすべて先行馬」という結果ではありません。JRA「2026年安田記念・結果/ラップ/払戻」

2026年安田記念 上位着順
着馬名騎手タイム上3F人気
1シックスペンス武豊1:32.133.98
2ワールズエンド津村1:32.134.27
2ガイアフォース横山武1:32.133.01
4セイウンハーデス幸1:32.133.76

訂正:セイウンハーデスの人気を旧表の7番人気から、公式結果に合わせて6番人気に改めました。

JRA公式発表の2026年安田記念・レースラップ(各200m)
1F2F3F4F5F6F7F8F
12.510.911.111.611.811.411.211.6

前半600mは34.5秒ですが、4〜5ハロン目は11.6秒・11.8秒で、旧記事の「12秒台へ落ち着いた」という記述は誤りでした。JRA「2026年安田記念・結果/ラップ/払戻」のラップに合わせて訂正します。

当サイトの回収率0%という記録は残します。一方、騎手が差し馬場を過信して仕掛けを遅らせた、先行馬が赤血球を温存した、といった原因はこの結果から確認できません。予想した位置取りと実際の位置取りの差を検討対象とします。

05 — F02 Hypothesis

F02補正案は別期間で検証する

既存の案は、前方で運べそうな馬に+15、後方待機に依存する馬に−20を付けるものでした。この値は独自の仮置きであり、抵抗削減率を点数へ換算したものではありません。今回訂正した安田記念のラップを根拠に、補正が当たったはずだと結論づけることもできません。

補正案を検証するために残す情報
段階記録する内容
発走前馬場の測定時刻、想定ペース、想定位置、適用理由
採点時補正前後の点数、情報不足の項目
レース後実際のラップ・位置取り、全対象の結果
別期間の検証期間、出走数、補正を使わない場合との比較

見立てと違う結果が出たときに、根拠を遡れることが先です。馬場情報の時系列はJRA「過去の含水率・クッション値」で確認し、予想に使った時点の値を残してください。

References

参考文献・出典

資料確認日:2026.09.12。公的資料は定義・制度、研究論文は記載した対象集団の知見を確認するために引用しています。独自スコアの予測精度を保証する資料ではありません。

※ 本コラムは馬場状態・展開予測の解説を目的とした教育的コンテンツです。公式結果と独自評価を区別して示しており、的中・利益を保証するものではありません。馬券の購入は20歳以上の方ご自身の判断・責任のもと、生活に支障のない余裕資金の範囲でお願いします。