Column / ラップ・ペース分析 2026.05.23

執筆・監修:梅 陵真(ANCY'S BRIEFING)

競馬のラップタイム分析
ペース・上がり3F・位置取りの読み方

レースのラップは、どこで流れが速まり、どこで落ち着いたかを知る手がかりです。レース全体の時計と各馬の上がりを区別し、通過順位、コース形状、進路を合わせて読む方法を説明します。生理学の推測を、実際に測られたタイムと混同しないことも大切です。

更新: · 出典・集計条件の明記と説明の訂正

01 — Basics

ハロンとラップの基準を確かめる

日本の競馬では1ハロンを200mとして扱い、上がり3ハロンは終盤600mです。ハロン棒の数字は残り何百mかを表すため、「4」は残り400mを意味します。JRA競馬用語辞典「ハロン・ハロンタイム・ハロン棒」

レースのハロンタイムは、その地点を先頭で通過した馬を基準にします。途中で先頭が変われば、ラップの列は同じ一頭の記録ではありません。各馬の通過順位や上がりタイムと区別して読みます。

02 — Pace

前後半の差とコースの基準を併用する

架空の芝1600m戦。8区間の合計は96.0秒(1分36秒0)。
区間1F2F3F4F5F6F7F8F
ラップ(秒)12.511.512.012.512.011.511.512.5

この例の前半800mは48.5秒、後半800mは47.5秒、最後の600mは35.5秒です。後半の方が1.0秒速いことは計算できますが、この差だけでそのコースの「スロー」を断定することはできません。発走直後の加速、坂、馬場、クラスによって基準が変わります。

ハイペースでは先行勢の負担が増える可能性がありますが、差し馬の好走を保証しません。逃げ争いが続く場合と、先頭だけが速く後続が離れている場合を分けて考えます。

03 — Last 3F

上がりが速い理由を、位置取りから読む

最後の600mが速い馬でも、前半を後方で抑えていた場合と、先行して速い流れに加わった場合では負担が違います。最速上がりを記録したかだけでなく、どこから何頭を抜き、どの進路を通ったかを確認します。

逆に終盤が遅くなっていても、早めに動いて勝負を決めた場合があります。着差、通過順位、映像を合わせることで、次走も再現できそうな内容かを考えます。乳酸や脾臓の状態はこれらの時計から測定できません。

04 — Speed

速度計算と限界の推測を分ける

平均速度は距離を時間で割って求めます。200mを11.1秒なら約18.0m/s、時速約64.9kmです。これは計算例で、サラブレッド全体の最高速度の限界値ではありません。

走行速度は平均ストライド長と単位時間あたりの完歩数の積として表せます。ただし、区間タイムだけでは両者を別々に測れません。「最後に必ず歩幅が短くなり、回転数だけで加速する」とも決められません。

05 — Drafting

隊列の影響には研究があるが、着順換算は慎重に

Spenceほか(2012)ペース配分とドラフティングは追跡データから、他馬の後方を走る割合と速度の関連を検討しています。空気抵抗が隊列を考える材料になる一方、観察研究であり、馬の能力や戦術の違いを完全に取り除いた実験ではありません。

実際の抵抗は相対風速、前の馬との間隔、横方向のずれなどに左右されます。模型の条件で得られた抵抗削減率を全レース共通の割合や「何着分」として使わず、走行距離の増加や進路が詰まる可能性も一緒に考えます。

06 — Course

芝・ダートと使用コースを明記する

JRAのコース寸法。脚質別の成績表ではありません。
コースゴール前直線出典
東京・芝525.9mJRA「東京競馬場・コース紹介」
東京・ダート501.6mJRA「東京競馬場・コース紹介」
中山・芝310mJRA「中山競馬場・コース紹介」
阪神・芝外回りA/B473.6m/476.3mJRA「阪神芝1600m外回りのコースの特徴」

旧表では東京の芝とダートの値が混在していました。直線の長さだけで逃げ・差しの優劣を決めず、馬場情報枠順・進路も照らし合わせてください。

References

参考文献・出典

資料確認日:2026.09.12。公的資料は定義・制度、研究論文は記載した対象集団の知見を確認するために引用しています。独自スコアの予測精度を保証する資料ではありません。

※ 本コラムはラップタイム・ペース分析の解説を目的とした教育的コンテンツでございます。研究の対象と計算例を区別して示しており、的中・利益を保証するものではございません。馬券の購入は20歳以上の方ご自身の判断・責任のもと、生活に支障のない余裕資金の範囲でお願いいたします。