Column / 生体力学 Model v1.4 中核概念

執筆・監修:梅 陵真(ANCY'S BRIEFING)

蓄積疲労インデックスの考え方と限界
出走履歴と調整情報から近走評価を見直す

連続好走や短い出走間隔を見たとき、直近の状態をどこまで信頼できるか。当サイトのCFI(蓄積疲労インデックス)は、出走履歴と公表された調整情報を振り返るための独自指標です。疲労研究の知見と、公開情報から分かる範囲を分けて説明します。

更新: · 出走間隔の計算例と未確認の負荷の扱いを追加

01 — Purpose

好走と負荷を別々に記録する

良い着順が続くことは評価材料ですが、状態を直接測った値ではありません。逆に短い間隔で走ったというだけで疲労困憊とも決められません。CFIでは、直近の出走条件、前走からの日数、公開された調整経過を並べ、見落としを減らします。

陣営コメントやパドック所見は観測した情報として記録します。落ち着きのなさや頭の動きを、ホルモン異常の証拠に置き換えることはしません。

02 — Research

過負荷研究が調べたのは管理された訓練

Gollandほか(1999)過負荷訓練とホルモン応答はスタンダードブレッド12頭を対照群と過負荷群に分けた研究で、32週時点の体重、運動継続時間、運動後ホルモン応答などを評価しています。こうした測定を伴う研究から、「2か月に3戦なら副腎機能が崩壊する」という結論は導けません。

回復に必要な時間は運動や測定対象によって違います。筋グリコーゲンの再補充時間と、腱・骨・全身状態の回復期間も同じではありません。前走から何日あるかだけで、どちらも完了したとは言えません。

03 — Workload

TRIMP・ACWRを使うために必要なデータ

TRIMPは運動時間と心拍などの強度を組み合わせた負荷指標、ACWRは短期間の負荷をより長期間の負荷と比べる考え方です。レースだけを集め、日々の調教を除いた比率では、本来の負荷を捉えられません。

2020年の総合馬術馬の負荷・傷害追跡研究は58頭・94競技シーズン・2,300の訓練/競技セッションを対象とし、心拍とGPSから負荷を計算しました。当週と前週の比率で傷害との関連の方向も異なり、単一の数値を全馬共通の危険線として移せる結果ではありません。

旧ACWR区分を置き換えた確認表。傷害率を示すものではありません。
旧来の扱い本記事での扱い
0.8〜1.3を安全域とするJRA競走馬に共通する安全域としては未検証
1.5以上を危険・故障率2〜4倍とする集計条件未確認。個体の故障確率には換算しない
短期間の出走数からACWRを推定全調教負荷がなければ正式なACWRとして扱わない

04 — CFI Model

CFIの式は評価手順の説明

従来の構成式は CFI = α Σ(Lrace × Rdef) + β Aspike です。Lはレース負荷の代理値、Rは間隔の扱い、Aは負荷変化への補正という設計を表します。係数、標準化、欠測時の扱いがそろわなければ再計算できません。

独自モデルの入力案。実測した生体指標とは区別します。
要素利用できる情報限界
過去60日の出走履歴日付・距離・馬場・クラス60日は便宜的な観察窓
調整経過公表された追い切りや陣営の説明非公開の軽運動・休息は欠測
近走の変化ラップ・通過順位・体重疲労以外の原因もある
0〜100のCFI注意点をまとめる独自スコア傷害確率や疲労量の百分率ではない

評価に迷う材料が重なる場合は、F04(直近フォーム)の根拠を再点検します。CFIの高さだけで病態や期待値の低下を確定する運用は避けます。

05 — Validation

出走間隔を計算し、負荷の不明部分を残す

公開情報だけで始めるなら、CFIの点数より先に出走日を並べます。次は、同じ馬が9月1日、9月21日、10月19日に走ったという架空の例です。間隔は日付の差で数え、競馬用語の「中何週」と混ぜません。

架空の出走履歴。全調教量や疲労を測定した記録ではありません。
出走日前走からの日数公開記録で見るものこの表だけでは分からないもの
9月1日前走日不明距離、馬場、通過順位、走破時計以前からの負荷の蓄積
9月21日20日前走から変わった距離・流れ出走間のすべての運動量
10月19日28日調整情報の発表日、レース中の走り回復の程度、心拍数や乳酸値

最初から最後までは20+28=48日です。言えるのは「48日間に3回の出走が記録され、直近の間隔は20日から28日に延びた」ということです。休養日や運動強度が不明なので、「負荷が何%減った」「28日で回復した」とは計算できません。追い切り情報がない日も、運動量0としてTRIMPやACWRに入力しません。

次の出走で何を確かめるか、先に決める

近走が落ちたなら、「同程度の流れでも終盤の失速が続くか」「距離や位置取りを変えたときに内容が変わるか」を分けて記録します。ペースや進路で説明できる部分があるなら、疲労だけを理由にしません。調整過程について陣営の発表を引用する場合は、発言者・日付・掲載元も残します。

一度の凡走をCFIの的中例にするのではなく、同じ判断手順で評価した出走を、好走・凡走とも残します。数値の入力値と係数をそろえられない段階では、上の履歴表を「負荷を確認するメモ」として使い、測定済みの疲労指数とは呼びません。

References

参考文献・出典

資料確認日:2026.09.12。公的資料は定義・制度、研究論文は記載した対象集団の知見を確認するために引用しています。独自スコアの予測精度を保証する資料ではありません。